過保護な関係

 

     

12 誘拐




—コンコンー

「どうぞ。」


「お邪魔します。」

「あれ、ななせ、ナイティは?、せっかくプレゼントしたのに。」

「えっ、」

あれってお兄ちゃんからだったの?


「ちょっと恥ずかしいから。それにお兄ちゃんと一緒にベットにもぐり込むのはいつもと同じ格好がいいよ。」

「そっか、残念。似合うと思ったのに。」


お兄ちゃんは何だかぶつぶつ言っているけど、わたしはかまうことなくベットへ。


ベットに入ると、わたしは猫のようにまるまった。これは昔と同じスタイル。そして、おにいちゃんも昔のようにわたしの方を向きながら『く』の字型に寝転んだ。


「誕生日以来、ななせが怒ったような、諦めのような、それでいて悲しそうな目を浮かべているのは知ってるよ。」

「うん。」

やっぱりお兄ちゃんはわたしを良く理解してくれている。


「言いたいことも少しは分かる気がするけど、重要なことだからななせの言葉でななせが思うままに話してごらん。」

そういうお兄ちゃんはの目は本当に優しくて、見つめているとまるで吸い込まれてしまいそうだった。


「お兄ちゃん、ううん、悠作くん、あのね、わたしと結婚することが決まっていたから今まで一緒に暮らしていたの?、子供の頃のわたしが悠作くんと結婚するって駄々をこねて、言い張ったから、そうしてくれたの?」

「まず最初の質問から答えるよ。ななせの誕生日に聞いた話じゃ消化しきれない説明だったと思うし。」


お兄ちゃんは優しい口調でわたしの頭をなでながら話を始めた。

小学校卒業まではよくこうしていたのを思い出す。さすがに中学に入ってからはしてないけど。でも、高校生になった今こうしてもらうと何か面映さを感じてしまう…。


「僕は三歳になろうとしていた頃に誘拐されかけたらしいんだ。たまたま母親が目を離した隙に。事なきをえたんだけど、そのことは周囲が思うよりはるかに母を精神的に追い込んでしまって…、結果、母はどこへ行くにも僕を片時も離さなくなってしまったらしい。


父が跡取りである僕がこのままでは駄目になってしまうと悩んでいたころ、たまたま諸事情で有賀家に打ち合わせで来たんだ。同じくらいの子供がいるということで、母の気分転換も兼ねて母と僕をつれてね。その時が僕とななせの初めての出会い。残念ながら、そのときのことはさすがに記憶にないけど。でも母の話によると、僕達はすぐに仲良くなって、それから何度となく遊ぶようになったそうだよ。有賀のお母さんが哲を産んだときには、僕は自分に弟が出来たと思って喜んだくらい有賀家に馴染んでいたらしい。


その頃かな、父がななせのご両親に僕を高校卒業まで預かって欲しいとお願いしたのは。ご両親は事情を察して快くこんなバカなお願いを引き受けてくれたよ。母もそれから他に目を向けたり、趣味を持ったりと自分を取り戻し、今ではすっかり元通りになった。


だから最初は結婚とかそういうことじゃなかったんだ、一緒に暮らすようになったのは。」



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