過保護な関係

 

     

5 過保護な関係の終局





織姫と彦星のことなんか思い出す暇もないほどの展開だった。


今日という日は両家の間で全てが明らかになる大切な日、ということで何年も前から決まっていたらしい。


全てが。

それは、お兄ちゃんが本当のお兄ちゃんじゃないってこと。

もっと言うなら、さっきお兄ちゃんの口からでたように、今、わたしの目の前にいる人達が本当のご両親だってこと。


じゃあ学校は?

それは、お兄ちゃんの家の特別な事情。


そもそも、うちとお兄ちゃんたちのつながりは?

それは、お父さんの会社の一番の取引先。



お兄ちゃんは大きな会社をいくつも持つ、この人達の息子。

誘拐とか何かがあっては困るから名前を偽って今の学校にいる。実は学長とお兄ちゃんのお父さんは仲がいいらしく、事情を汲んでこのことは公には伏されてる。


今更だけど、お兄ちゃんの名誉のために。

学長と親が知人だからと言って、お兄ちゃんは裏金で入学したわけでもなんでもない。本当に成績がいいから。


ついでに、普通の家、あ、個人的にはうちは恵まれた家庭だと思っていたけどお兄ちゃんたちにしてみれば普通ってことね、で暮らすことで、社会勉強も兼ねられるらしい。


どうもお兄ちゃんが今まで予備校の合宿とかなんだとか出掛けていたのは、実は里帰りだったそうで。



で、最大の疑問。

どうしてうちなの?ホームステイ先が?

他にも係わり合いのある家があったでしょ?

それは、わたしがまだ小学校に上がる前に何度かお兄ちゃんと遊んだことがあったんだって。で、当時の無邪気なわたしと、お兄ちゃんはすごく仲良しになって、わたしの『ゆうたくたんとじゅっといっしょにいるのぉ〜』で話が決まったらしい。


分別のつかない子供の戯言でしょ、これって。


だけど、今日一番びっくりしたことは、お兄ちゃんとわたしのこれからの関係。


過保護な関係から一転、わたし達は婚約者という関係になる。

それも、さっきの話と同様わたしの馬鹿な一言、『ゆうたくたんのお嫁さんになるぅ〜』が発端。


婚約って結婚する前の段階だよね。


その話を聞いたときは、さすがにお行儀が悪いと分かっていても、お箸が手から転がっていった。




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