過保護な関係

 

     

6 始まり




関係が変わった。

お兄ちゃんから婚約者。普通はこんな変化あるわけない。

でも、わたしには起こった。


妹だった頃、まあ、つい数日前までは、過保護すぎるお兄ちゃんだと思っていた。でも今は


わたしの誕生日に行なわれたあの食事会以降我が家にはルールがいくつか出来た。その一つが、何も知らない弟のために引き続きお兄ちゃんはうちの子。これはわたし一人が立ち振る舞えばいいことで、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも今までそれが普通だったんだから、至って簡単。


だけど、お兄ちゃんとわたしの間だけのルールは兄弟ごっこなんか比じゃないくらい大変なことだらけ。


—カチャ—

「おはよう、ななせ。今日もちゃんと起きていたんだ。」

「うん、おにい……」


今まで朝はいつもお兄ちゃんに起こしてもらっていた。

だけど関係が変わった今、それはどうかと思う。

そう思うと、緊張?、それとも甘えがなくなったからか自分で起きれるようになった。けれど、お兄ちゃんの習慣が変わることはない。

だから、今日も今日とてお兄ちゃんは当然わたしの部屋に入ってくる。


そして……

「ちがうだろ、」

「あ…、ゆうさ、、、ムリ。やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだから。」


お兄ちゃんは二人きりの時だけ自分のことを悠作と呼ぶよう要求してきた。だけど、それはかなり難題。

だって今までずっとお兄ちゃんだと思って、お兄ちゃんと呼んでいたんだから。


そしてもっと難題なことがこの後わたしを待っている。


お兄ちゃんの綺麗な顔がわたしを覗き込む。そして…、


「待って。これもムリ。」

「いい加減諦めろよ。そのうちもっとディープなことだってするんだから。」

「もっとディープ…、それって…」

「せっくす。知ってるだろ?」

絶望的。


わたしが絶望感を味わっていると、お兄ちゃんは今日も許してやるか、とか言いながら頬にチュッと軽くキスをしてきた。

これは唇になされるのが、本当の姿のようで…、あ、お兄ちゃんが言うにはね、でもわたしはそれを受け入れられないでいる。


受け入れられないと言えば、そもそもこのお兄ちゃんとの婚約。

この間の食事会では、そこにわたしの意志はなかった。だってあまりにも突拍子もない話過ぎて、言葉を失ったから。


確かに今までお兄ちゃんが、わたしのお兄ちゃんでなければいいのにな、だってこんな素敵な人を他に見たことないから、兄弟でなければ絶対好きになっちゃう、なんて思ったことはあった。でもそう思えたのは、兄弟だったから、むしろそんなことありえないと思っていたから。




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