過保護な関係

 

     

7 テスト勉強




「はあー、」

「ななせ、どうしたの?最近溜め息がムチャクチャ多い。」

多くもなるよ、この状況じゃあ。


「ね、良ければ話してよ、相談に乗るから。」

ムリ、ムリ、絶対ムリ!実はお兄ちゃんがわたしの婚約者でした、なんて。それに、寿々だってお兄ちゃんのファンだし。間違っても相談なんか出来ないよ。


「テスト。」

「はあ?」

「テスト。寿々と違ってわたしは外部から来たから勉強大変なんだよ。前回の中間も良くなかったし。」

「そんなこと?」

「そんなこと、なんて言葉じゃ片付けられないよ、わたしには。」

「じゃあ、有賀先輩にみてもれえばいいじゃん。常にトップ3っていうか、一位か二位なんだから。しかし、あそこまで顔よし、頭よし、性格よしな人間はある意味怖いよね。」


ホント、怖いよ


「あ、噂をすれば、有賀先輩だ!」

寿々は嬉々として、お兄ちゃん目掛けて一直線。


「噂って、寿々ちゃん?」

「今ちょうどななせと有賀先輩の頭がいいって話をしてたんですよ。」

「それはありがとう。」

「でも、ななせは前回のテスト悪かったから、今回も憂鬱みたい。」

「そっか。」

それを聞いて、なんかお兄ちゃんの口角があがった気がした。


「ななせ、残り少ないけど、今日から家で少し勉強をみてあげるよ。さすがに自分の妹の成績が下から数えたほうが早いなんて悲しいからな。そうだ、今日からテストまで迎えに行くから、放課後は教室にいるように。」


外では妹思いの過保護すぎる有賀先輩なだけに、その言葉を否定するのは難しい。なんか、お兄ちゃんが張った蜘蛛の巣にまたかかってしまったような気がする。


イヤ、かかった。

お兄ちゃんと二人で下校。兄弟ということで、手を繋いだりはしないけど、会話は濃厚。


さっきから勉強の話なんて全然してない。だけど、帰ったらわたしは猛勉強をしようと心に決めた。


何故って?


だって、前回と同じくらいの成績だったら、お兄ちゃんと夏に二人っきりで旅行に行かなきゃいけなくなっちゃう。ついでに言うと、深い間柄の恋人がベットの上ですることももれなく付いてきちゃうらしい。


どうして断れないかと言うと、お兄ちゃんの婚約者として恥ずかしくない教養を身につけるという名目でうちの親に話をつけるとお兄ちゃんが言ってるから。



家に着いてからが、もっと悪かった。


だって、お兄ちゃんが勉強をちゃんとみてくれると思っていたのに…、

「どうしようかな、だって、勉強をみてあげたらななせとの夏の旅行もセックスもなくなるからな。でも、どうしてもみてもらいたいなら、1時間ごとにキスして。」

だって。

しかもそのキスは頬とかじゃなくて、そんな酷いことばかりを言う口にだって。信じられない。




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