寒さと後悔

 

謝罪


「ごめんなさい。」

いつもより少し早めに来た彼女の席へ向い、私が開口一番発した言葉。


頭をあげて彼女を見ると、まさしく"キョトン"としている。これが要のツボなのかしら…。ま、そんなことはどうでもいいけど。


「沢野井さん、どうして謝るの?」

「怒ってなぁい?」

「怒るも何も…」

「だって、わたしがこの間変な質問をしたから…、木内さん、みんなの前で、昨日、」

そこまで言うと目の前の彼女は沸騰しそうな勢いで赤くなり始めた。なんだか可愛い。

そんなことを思って、やはり自分にもあの要と同じ遺伝子が少なからず組み込まれていることに嫌悪する。


「むしろ感謝してるの。自分でも自分の中に隠れている考えがちゃんと言えたのは沢野井さんのお陰だと思って。」

「そう言ってもらえるとなんだか助かるよ。でも、やっぱり、木内さんに迷惑かけちゃった気がするから、これからは何かあったら木内さんの役に立つようにするね。だから、なんでも言ってね、木内さん。」

半分以上は本気の親切。けれどもいくらかは要の弱みを取り込みたい私の方便。


要は私と木内さんが仲良くすることで、彼女に関する情報を得た。だけど、私だってそろそろその立場を生かして前に進まないとね。


私の謝罪の真意は今までのことと、結果としてあの要と木内さんをくっつけてしまったこと。なんて、口が裂けても本人には言えないよね。


"本当にごめんなさい"


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