絶対条件
絶対条件
5
性的虐待、尚哉はその事を示唆しているのだろう。
先程からの話の流れとしては、父のお手つきならばこの話は無かった事になる。きっと、父のお手つきだと告白すれば汚らわしいと殴られるくらいのことはあるのかもしれない。
それでも…、一瞬の痛い目と今後続くであろう苦痛。取るべき選択肢は決まっている。
「そうよ、あたなは本当に察しがいいのね。」
その言葉に尚哉の口元が微かに笑ったように耶恵は思った。
「聞いたか、隼人?」
「はい。」
「おまえは処女か父親のお手つきか、どっちかだろ。父親にやられてるんなら、俺に足を開くことぐらいどってことないんだろな。俺の方がまだマシな相手なんだから、道徳的に。父親以外のを咥えさせてやろう。若い分うまいし、何より気持ちいいだろうよ。」
父親に性的関係を強要された体に、尚哉が手をつけることなどないと耶恵は思っていた。暴力くらいは振るわれるとしても。だからついた嘘。ところが尚哉は隼人によって拘束されている耶恵の体にわざとゆっくり手を伸ばし、ブラウスの上から人差し指で乳首の当りを強めになぞり始めた。耶恵の体は不思議なことに、指が乳首に触れるたびに離れているというのに膣の辺りがきゅっと締まった。
「88って言ったよな、この間。父親に大きくしてもらったのか?」
尚哉の口調は質問口調であって、別に耶恵に質問している訳ではない。不敵な笑みを浮かべ耶恵を追いつめようとしている。ボタンを一つ一つ外し、楽しみながら。
「隼人、どう思う?88だそうだ。」
「はい、あくまでもここからですが、それくらいはあるのでは。」
「すまん、悪かったな。そこからだと良く分からないだろう。そこの鏡の前まえ歩けよ、耶恵。」
確かに拘束されているのは両手首のみ。足は自由だ。そしてブラウスのボタンが全て外されている体の全面も足同様”自由”。鏡の前に立てば、キャミソールにブラジャーという姿を初対面に近い山科隼人にまで見せることになる。
「聞こえなかったのか、鏡の前に立てと言ったんだが。」
尚哉の声に反応するかのように、隼人の手首をつかむ手が強くなる。それだけでも痛いのに、隼人は軽く捻りを加えたようだった。
「痛っ、」
耶恵は手首の痛みに堪えきれず、小さな声をもらした。
「もう一度言ったほうがいいか?」
それはもっと痛い目をみたいかという尚哉の問いに他ならない。次の痛みがどんなものなのか…。
分からないという事が与える恐怖。
何より耶恵は知っている。次の痛みに耐えたところで、更なる痛みがやってくるだけということを。
父からの暴力で得た経験は、ここでも同じことが為されるのを予期するには十分だった。重い足取りながら、耶恵は一足一足、鏡に向かって歩き出した。
昔、絞首刑があった頃の罪人もこういう足取りだったのだろうかと思いながら。勿論、このラグジュアリーなスイートルームに絞首台などないが、行き着く先には良くないことが待ち構えているのは同じ…。
嫌な予感ほど、怖いくらいに良くあたる。
「ここなら鏡越しに見えるだろう。」
「はい。」
「あ、気が利かなかったな。」
「や、何をするんですか、」
「おまえには何をしているように見えるんだ、脱がしている以外に。」
尚哉は背筋が凍りそうな程冷たい視線に笑みを浮かべ、ブラのホックを外しキャミソールと一緒に首もとにたくし上げた。
「これでいいだろ。」
「はい、本人の申告ぐらいじゃないでしょうか。」
「そうだな、さすがにこの間は乳首の色まで聞かなかったが、いい色だな。次はウエストとヒップか、」
「お願い、もう、止めて下さい。いやぁ、お願いだから、」
耶恵の涙混じりの叫びが尚哉に聞き入れられることなどなかった。無情にもスカートは床に落ち、すぐさまストッキングごとショーツも下ろされた。
「どう思う?」
「こちらも聞いている通りかと。」
「スリーサイズに嘘はなかったってことか。隼人、邪魔な布を剥げ。」
「耶恵さん、お好きな方を選んで下さい。全部ちゃんと脱ぐか、まるでレイプでもされたようなボロ切れを着て帰るか。私はあなたの意思を尊重します。」
恐怖で既に涙も枯れ、声もでない耶恵に隼人は穏やかな口調で質問した。選択肢は二つ。けれど一つは無いに等しい。
「手を放してあげましょう。もし選んだのが前者のときの為に。後者ならさながらレイプの真似事のため、逃げ出してもいいですよ。ストッキングを脱ぐかはくかの時間ですぐに捕まるでしょうけど。若しくはその中途半端な位置のまま逃げるというのも面白いでしょうが。」
鏡越しに見える隼人の目も冷たいものだった。笑みが無い分、尚哉より怖さはなかったが。
既に全裸に近い、否、もしかすると変に布がついている分この姿の方が恥ずかしいのかもしれない。手首を解放されると耶恵はのろのろとお情け程度についている布を取払い始めた。
「聞き分けがいいな。じゃあ、そのままベッドへ行け。」
「ベッド…ですか?」
「忘れたのか、さっき言ったろ、若いのを咥えさせてやるって。」
「あ、あの、」
「何だ、」
耶恵は父と関係をもっているなどという嘘をついてしまったことを後悔した。このまま尚哉との関係を強要されるのは目に見えている。けれど…ことに及ぶとすれば隼人はどうするのだろうか。結局のところ尚哉は命令するだけで、手を下すのはどちらかというと隼人だ。
今更ながら、嘘をついたことを告白すれば許してもらえるのだろうか…
「そこに横たわれ。隼人、証拠はここから押さえておけ。」
押さえる…耶恵はこの隼人という男に押さえつけられ、尚哉からセックスを強要されるということを理解した。
二対一、どうやってもこの状況からは逃れられない。
絶望が耶恵を襲う。
しかし隼人は耶恵に近づいてはこなかった。代わりに持ってきたかばんに向かい、何やら取り出した。
耶恵に近づいたのは尚哉。惜しげもなく引き締まった裸体で。
「男の体は見慣れているのか、目を逸らさないところを見ると。父親にそんなに可愛がられていたとは、」
尚哉はそう言うと、耶恵の乳房を乱暴に掴みまるで噛み付くように乳首を口に含んだ。それは克実の方法とは全く違い、既にどうしていいのか恐怖で何も分からない耶恵を更なる恐怖へ突き落とした。
「んん、いたい、いやぁ、」
「痛いより、非道徳の方が重罪だろ。隼人、ズームじゃなくてもっと近くで撮れ。こいつにカメラを回されていることを教えてやれ。」
「いやぁ、やめて、いや、お願い、何でもするから、」
「止めなくても、おまえはこれから俺に言われたことは何でもするんだよ。イヤだろ、こんな映像を家に送られたら。それとも会社ならいいのか?上司にプレゼントでもするか。」
「そんなことしたら、あなたが、」
「俺は困らない。顔なんて編集できるし、仮に見えても、そんなことは押さえ込める。困る、ん、違うか、惨めなのはおまえだけだ。これから散々やられて、遊ばれるんだから。」
絶望なんかじゃない。これから始まるのは拷問だ。じゃあ何を自白したら解放されるのだろうか。
耶恵は自分は何て馬鹿なんだろうと思った。自白することなどないのだから拷問からの解放もない。たった一つ自白するとするなら、嘘をついたこと。でも、それを口にすれば嘘をついたという罪に対する次なる拷問が待っている。
「きゃ、やめて、痛い、も、やめて、」
克実はそこを何度も指や舌でなぞってからしたことを、尚哉はいきなりした。
「隼人、もっと近くで撮れよ。こいつ結構いい色してる。クリトリスも充血してふくれ上がっていやらしい。」
尚哉の言葉に耶恵のクリトリスと膣口はカメラにそこだけのアップで収められた。
「じゃまだから剃るか。父親もびっくりするだろうな、こんなところをツルツルにされて返されたら。その上、結婚はなし、しかもこれをネタに俺への服従を押し付けられるわけだ。おい、あれはどこだ?」
「かばんの中に。」
「耶恵、もっと楽しませてやる。」
「お願い、もう、やめて、もう、十分でしょ、」
「まだだ、まずはこれからだな。」
尚哉が何か小さな機械にスイッチを入れ、耶恵のクリトリスに押しあてた。
「あう、あ、あぁぁ、」
「へえ、なかなか良さそうだな。出力が更に上げられるとは。どうだ、おまえの為に用意したローターは。」
「声も出ないくらい喜んでいらっしゃいます。下の口からも大量の涎が。」
「じゃあもっと喜ばせてやるか。」
尚哉は更に二つのローターを耶恵のそれぞれの乳首に容赦なくテープで固定し、出力を上げ始めた。そして再びもう一つでクリトリスを責め、楽しそうに笑った。
「さてと、そろそろ本題に移るか。カメラの前で言ってもらおうか、父親にちんちんで折檻されてるって。そうしたら出力を下げてやろう。言わなければ、この特大バイブをケツの穴にぶち込むか。アナルは処女か?だったら使いものにならなくなるな、こんな太いのをぶち込まれたら。」