絶対条件

 



尚哉の言葉にリカは恐い程従順だった。何の躊躇もなく服を一枚一枚脱いでいく。初対面の耶恵がいるにも関わらず。

「他人のセックスを間近で見るのも一興だぞ。しかもやられるのは隼人だ。」

もう自力では動くことすらままならない耶恵を尚哉は引き寄せ、胸、秘部をまさぐりながら耳元で囁いた。

「リカが今付けたのが何だか分かるか?分かるよな、おまえがさっきまで入れてもらってよがっていたのと同じ形なんだから。これから隼人はあれでやられるんだ。隼人、コックリング着けろよ。分かるよな、勝手にイクなよ。」

リカはグロテスクな男性器を模したものを装着すると、今後は隼人のペニスに何かをはめた。


「尚哉様、どちらでいたしましょうか?」

「そうだな、耶恵に良く見えるように、そこでしろ。」

リカの質問に、尚哉は広いベッドの端に視線を送った。ギングベッドロングサイズよりも大きそうなこのベッドならそれは簡単だろう。けれども…

「隼人様、こちらへお越しいただけますか。」

「いきなり射さなくてもいいからな。少し味わえ。隼人が好きな前立腺マッサージも忘れるな。」

「はい。ありがとうございます。では、隼人様、まずは仰向けになって下さい。」

リカは隼人をベッドの端に仰向けに寝かせると、深い口づけをしながらペニスを扱き始めた。隼人がふさがれた口をリカから何度もはずそうとしてはもがく。唇がそれた瞬間に艶かしい声をあげながら。


「隼人は美しいだろう、どう思う?」

尚哉が言うように隼人は美しかった。耶恵は尚哉の問いかけに唾を飲み込みながら小さく頷いた。

「あれだけ咥えさせてやったのに、止まらないな、このいやらしい涎は。」

秘部にあてがわれていた指を耶恵に見せつけながら、尚哉はそこから愛液が溢れていることを知らしめた。何ていやらしい体なんだろう。実の弟にも指で何度もイカされ、…そして、あれほど何度もセックスをされた直後だと言うのに、他人のセックスでも濡れるなんて…。自分のものであって欲しくないと思った程の下半身なのに、その下半身は脳へダイレクトにもっと刺激が欲しいと伝えてくる。たったこれだけの時間で、体は尚哉に落ちてしまったのだろうか。何より、感覚が麻痺してしまっている。目の前の男女の絡みが美しく、羨ましく見えるのだから。きれいなリカと受ける印象は冷たいかもしれないがやはりきれいな隼人が絡めば、セックスと言えどもきれいに見えるのはもしかしたらしょうがないのかもしれない。でも、羨ましいというのは…


リカの口は乳首への愛撫に移り、解放された隼人の口からは喘ぎとも呻きとも言いようがない声が漏れる。その声はリカが後ろから隼人を攻めながら、ペニスを勢いよく扱きだした頃には最高潮となった。

「うう、リカ、はずしてくれ、」

「隼人、我慢できないのか?」

「お願いします、尚哉様、イカせて下さい。」

「状況を説明して、耶恵に許可をもらえよ。ケツをもっと突けよ、手もサボらず竿をしっかり扱けよ、リカ、」

「うぁ、リカ、うぉぉ、許してくれ、」

「隼人、リカじゃないだろう。耶恵に頼めよ。」

隼人は途切れ途切れになりながら、それでも時間をかけないように耶恵に射精の許可を求めた。

「隼人をイカせても良ければ、コックリングをはずしてやれ。根元に付いてる輪っかのことだ。はずさなければ、おまえのせいで隼人は苦しむ。」

「耶恵様、」

「あ、あの、イって下さい。隼人さん、」

「お、うっ、お願い、します、リングを、はずして下さい。」

苦しそうな訴えに、耶恵は恥ずかしいながらも隼人の股ぐらに重い体を寄せリングをはずした。急がなくてはという焦りからか、既に何度も射精感を堪えたペニスには手荒な扱いで。

「うっ、、、あ、」

リングがはずされると、叫びにも似た声をあげ隼人は果てた。

精液を新たに自分の主人になった耶恵に浴びせるという失態を犯しながら。


「申し訳ございません、耶恵様。」

「きれいに舐めとれ、と言いたいところだが、俺の妻になる女の体をおまえに舐めさせる訳にはいかないな。リカ、おまえの主人の失態だ、おまえが舐め取れ。」

「はい。」

「そんないいです、そんなこと。シャワーを浴びれば、」

「おまえに発言権はない。分かっているだろう、耶恵。それともこのままケツの処女も失いたいか?」

「耶恵様、そこに横たわって下さい。」

初対面だというのに、リカが耶恵を思いやり、事態がこれ以上悪くならないようにしてくれているのが分かった。

この部屋はホテルの中ではスイートルームと呼ばれている。けれど耶恵にとって、そしてリカにもスイートという名は名目に過ぎない。中に入った時点でスイートルームという檻に収監されたのだ。そしてリカには何らかの理由で見えない手枷足枷がついている。顔色一つ変えず、尚哉の言葉全てに服従しているのはそのせいだろう。そんな状況下にある自分がどれだけ惨めで、辛いか…、だからリカは耶恵に優しくしてくれるのかもしれない。


「あ、うんん、」

「リカ、特にここはきれいに舐めてやれ。それと、もう一カ所、言わなくてもわかるよな。」

「はい。」

リカは尚哉に捻りあげられ堅く尖った耶恵の乳首に音をたてながら吸い付いた。

「どうだ、新しいご主人様のザーメンの味は、」

「とっても美味しいです。」

「だとよ、隼人。新しいご主人様のために一生懸命やっているリカにご褒美をあげないとな。バイブをぶち込め。」

「…はい、お願いします。隼人様。」

そう言うと耶恵の体の上で四つん這いになっていたリカはヒップを突き出した。すぐに耶恵の耳にもリカを責める為の道具にスイッチが入ったことを知らせる音が届く。けれども、尚哉によってもっと残酷な方法で今度はその道具がリカを貫き始めたのを知る事になった。


「リカ、耶恵の乳首に歯を立てろ。歯を立てるだけだ。これから隼人がバイブでおまえを悦ばせるが、耶恵から口を放すな。口を放せば、その分耶恵が痛い目を見る。歯を立てて食いしばり、耶恵が声を漏らせば、おまえのケツが叩かれる。分かったか?」

「はい。」

こんな歪んだ光景に、尚哉が面白そうだと言わんがばかりの表情を浮かべている。リカは耶恵に迷惑を掛けまいと、隼人のせめに耐えつつも歯を立てている乳首を気にしながら悶えていた。

けれどもそれは時間の問題でしかなかった。リカにあるのは背中を大きくしならせて果てるか、歯を食いしばるか。尚哉はどちらにしろ耶恵に痛みをもたらすことは最初から知ってのことだ。誰がそれを与えるか。


「ん、ああ、あん、う、」

与えたのはリカだった。リカは大きな快楽を堪えるために、歯を立ててしまったのだ。乳首の痛みを飲み込むことが出来なかった耶恵は、声を出してしまった。

「リカ、おもちゃをしっかり挟んでおけ。落とすなよ。隼人、手があくだろ、思いきり叩け、リカのケツを。」

「はい。」

くぐもったようなモーター音とは異なる音が何度かした時だった、リカがその衝撃に耐えきれず歯を食いしばったまましなったのは。耶恵の乳首は噛まれたまま強く引かれる。思わず痛みに再び声をあげると、その声にリカは口を放してしまった。

「なんだリカ、堪え性がないな、放したのか、」

「あ、、、耶恵様、許して下さい。」

「どうする、耶恵、リカを許すか?許してやるなら、リカの乳首をおまえがやられたように噛んでやれ。少し強めにな。許したくなければしなくていい。その代わり…、どうする隼人?俺たちが楽しめる面白い罰をおまえが考えろ。」

精液を耶恵に浴びせた隼人。きれいに舐めとろうとしていたリカ。隼人のためにそんなことをしていたのに、隼人はリカをバイブでせめ、更には尻を何度となく叩き、辛い目にあわせた。そして今度は耶恵に与えてしまった痛みに気付き、乳首を放してしまったことに罰を与えられそうになっているリカ。その罰は尚哉を喜ばせるほどのものでなくてはいけないし、きっと執行するのは隼人なのだ。


狂っている。そう、狂っているのだ。しかもこの狂いを止めるのは、だらし無くも耶恵の前でへたり込み、それでもバイブだけはなんとか挟んだ状態で刺激の度に揺れているリカの胸の頂を噛む事。

リカの顔は上気し、目尻からは涙が流れている。何となくだが耶恵にも予想はつく。乳首をきつく噛めば、リカが痛みにバイブを放してしまうかもしれないことを。尚哉は落とすなと言っていた。落とせばリカはまた罰を受けなくてはいけないのだろう。

再び嫌な選択が耶恵を苛む。耶恵に許されないリカとおもちゃを落とすリカ。どちらが受ける罰は重い、ううん、痛いのか。

「どうする、耶恵?許すか、許さないか。」

答えは決まっている。リカを許さないなどということはないだろう。けれど…

「答えろ、耶恵、」

「…勿論、許します。けれど、」

「耶恵様、どうか、う、どうか、きつく噛んで下さい。」

「早く、やってやれ。」

耶恵の両手首を後ろで拘束しながら尚哉は言葉を続けた。

「リカの乳首を立たせてからやれよ。立たせる方法は二つ。一つは、さっきおまえがリカにされたように舌と口で立たせる。もう一つは、リカにビンビンにされた乳首をリカの乳首に擦り付ける。後者はおまえも楽しめるぞ。好きな方を選ばせてやろう。」

後ろで尚哉に両手を拘束されている以上、後者は耶恵自ら乳房を突き出して行わなくてはいけない。そんな恥ずかしいことは…。どちらにしろ、されるリカにも覚悟は必要だろう。耶恵はリカのため、小さな声で言った。『口でします。』と。




<<    index   >>

   Novel index      Back      Next