楽園のとなり

 

18



響子の目がゆっくりと合わさる。まるで全てを亜樹に委ねるように。


響子の初めては、悲惨なものだっただろう。そう仕向けてしまった亜樹が思うのも不思議なものだが。事実亜樹は、自分という杭を響子に突き立てることが全てだった。愛撫も何もなく、ただ征服するために。

でも、今回は違う。体は響子を早く味わいたいと訴えかけてはいるが、全て彼女を優先したい。


亜樹は先走る気持ちを抑えて、響子の首筋から胸にかけて口付けを繰り返した。甘い吐息が一段と大きくなるところは丹念に。響子の息が弾む胸への刺激には、聴覚にも届くよう吸い上げる音を大きくして。


そして頃合を見計らい、亜樹は響子の潤いを確かめようとそこへ手を伸ばした。

「あぅ、くさ、かべ君、そこは、あぁ、イヤァ、」

目を潤ませながら、なけなしの力で亜樹の手を響子が掴もうとする。そして、羞恥に頬を染めながら涙で滲んだ目を向けた。


「わたし、経験もないし、やっぱり、」

「経験なんて要らない。気持ちがあれば大丈夫。何もしなくてもいい、ただ俺の気持ちに応えようとしてくれれば。」

亜樹はそう言い、響子のまだ男を知らないに等しいそこへ中指を滑りこませた。優しく何度も、中から蜜をかき出すように。その間、乳首を何度も音を立てながら転がして。響子の息遣いが更に荒くなると、その滑った中指を利用して、クリトリスを摘み上げた。


「ああん、あ、ぅ、」

艶かしい小さな叫びが部屋に広がる。本当は亜樹の体でいかせたい。けれど、一度いっておいたほうがその後の挿入はスムーズになるだろう。亜樹はそう思い、強すぎる方法とは知りつつも自分の体を下にずらし、響子の力の入らなくなった両足を軽く開いてやった。


女性の性器など見慣れているのに、一瞬目を奪われてしまった。亜樹により快楽を与えられ、淫靡なぬらぬらとピンクに光るそこがあまりにも妖艶で。可愛らしかった高校時代。そして清楚で優しそうな雰囲気をかもし出す響子にもこんな場所があったのかと。

そしてそこに滴っている蜜を全て吸い尽くしたくなった。


「日下部君、何、やぁ、ああん、いやぁ、」

指よりも強い刺激に響子が広げられていた足を閉じようと力を込める。本当なら響子の意思を尊重したい、けれど亜樹はその行為を暫く続けた。そのうち響子の足は大人しくなり、寧ろ力が抜けもう少し足を開くように。

それを待っていたかのように、亜樹は口での愛撫を止め再び指を響子に差し入れた。今度は確かめるように、二本、三本と。亜樹の唾液が混じったそこは水音を立てながら指を飲み込んでいく。そして止めを刺すように、亜樹は響子の固く尖ったクリトリスを唇と舌を使い嬲った。


そんなことをされたら一溜まりもない響子が体を震わせいったのはその直後だった。白い肌がピンクに染まり大きく息をやり取りするのに合わせ、先ほどまで亜樹の愛撫を受けていた乳房が上下する。その光景に、耐えていた亜樹のペニスは爆発寸前になった。スラックスを脱ぎ捨て、ボクサーパンツから勢い良く飛び出すペニスは先ほどまでの疲れなど見せていなかった。



響子は目の前がチラチラする感覚と、腰が深く沈む感覚に身を預けていた。亜樹の赤い舌が乳首に与えたように下腹部に刺激を与えた瞬間何かが弾けた。そして荒い息を繰り返しながらも、目の前の映像は鮮明に脳に映る。亜樹の程よくしまった裸体。なんて綺麗なんだろうと思った。


その体は再び自分の上に。

「もっと俺を感じて。」

耳元でそう囁く亜樹の声。その次の瞬間、下腹部に大きな衝撃が加わった。痛みは無かった。寧ろ、先ほどから刺激を与えられ続けていたそこは女としての喜びを感じている。ぴったりと密着しながら亜樹のペニスを受け入れたようだった。


響子が現実に返るかのように、目を大きく開くと亜樹のはにかんだような笑顔が向けられた。そして、ちょっと言い辛そうに一言。

「情けないけど、長くはもたない。」

響子には良く分からない一言。ただ愛情に応えたいという気持ちからか、両手を伸ばし亜樹の体に腕を回した。


「分かってる?、そんなことしたら本当にもたないくらい腰振るって。」

その一言を最後に、亜樹と響子は深く繋がり愛し合った。






亜樹にしては珍しく、目覚ましが鳴る前に起きた。隣では響子がしどけなく横たわっている。まだ深い眠りの淵にいるようだ。腰から下のだるさに苦笑しながらも、熟睡している響子を眺め、その存在を確かめ昨日のことが現実だったと認識する。

しかしその姿は、響子には残念だろうが、タオルケットが臍上辺りまでしかない。なので、右乳房が左に向かって下がり、左乳房がベッドに投げ出されるように横たわっている。その両乳房には亜樹が付けた愛し合った跡が無数に広がっていた。鎖骨の下にも、肩から脇にかけても。そんなに夢中で響子を味わっていたのかと思う程。それにも関わらず、飽きることなく亜樹は響子のむき出しの肩に唇を這わせた。


響子の体を思い、挿入したのは一度だけ。けれども、その後も何度も愛撫をし響子の体に喜びを与えた。触れてしまうと、亜樹自身その肌から自分の肌を離せなくなってしまう。


その感覚に、響子が目覚める。最初はうつらうつらしていたものの、亜樹の行為に抗議の声を上げた。

「日下部君、会社、」

「休む?」

「出来ないよ、」

「じゃあもう少しだけこのままで。」

結局亜樹は肩だけでなく、剥き出しの胸にも幾度となく口付けた。それは響子に『愛し合う二人』という意識を植え付けるように。


この日、二人に朝食を取る時間の余裕はなかった。胃は満たされていない、けれど何かとても大切なもので心が満たされているのを感じた。




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