気ままな10月、日曜日

 

部屋



帰るタイミングを逃し、ズルズルと脇田君の家の中にいる。場所を特定するならここは、脇田君の部屋。

うちは夕飯は19時半くらいから始まるから、それまでに帰ればいいんだけど。

今は17時近く、やっぱり今度こそ帰らないと。


それでも、先程脇田母が持ってきたハーブティに手をつけないのも悪いから、脇田君の部屋の真ん中にある小さなテーブルで頂いている自分がいる。


ハーブティを飲みながら、今日の映画について脇田君と話す。

話の内容から脇田君も気に入ってくれたみたい。

そこで、大切なことを思い出した。

「脇田君、レンタル代教えて。」

「あ、いいよ。俺も観たいと思って借りてきたんだから。」

「でも、それじゃあ困るよ。この間はジュースもご馳走してもらったから。」

「いいって、いいって。」

「でもぉ。やっぱり友達としては気が引けるから。」

「じゃあさ、来週、今度は木内さんが何か借りてきて。俺にお勧めの。」

「来週?」

「そ。場所はうちでも木内さんの家でもどっちでもいいけど。」

「うちは…、すごく散らかってるから、できれば脇田君の家のほうがいいんだけど。」

「じゃあ、それで決定。いい?」

あれ…?あれあれ、ってことは来週もこうするってこと?


「あ、何か他に予定あった?」

「ううん。あ、脇田君こそ予定があるんじゃない?」

「何にもなかったけど。」

「そう。」



再三にわたり、夕飯の申し出をしてくれた脇田母&脇田姉が見送るなか私達は歩きだした。そう、ワタシタチ。


結局、脇田君の家を出たのは18時15分くらい。二ヶ月前まではあんなに強い日差しを放っていた太陽も今は、早々に沈みはじめる。

勿論断ったんだけど、脇田君が送っていってくれることになった。

帰りの道すがら、暗いとか明るいとかの次元でなくて送ってもらったことに感謝した。二度と来ることはないと思っていたせいで、道を全く覚えてなかったから。


私には今までいなかったタイプのお友達、脇田君は。

だって、家にまで遊びにいく男友達はおろか、男友達と呼べる存在自体怪しいし。普段、学校で話す子たちも脇田君の周りにいる女の子と正反対。


自分の周りに出来ていった自分の殻、それは私が望んだものだったり、知らないうちに形成されたものもだったり、まあ、色々あるけど…それを外からノックされるのも楽しいかもしれない、なんて電車の中で思ってみた。



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