気ままな10月、日曜日

 

定義



気にしてみると、気付くことがある。

私が来るより前に脇田君は学校についているらしい。これは推測にすぎないけど。なんせ、とったデータが先週と今日だけだから。


そして、私が教室に入ってくると、たぶん目で挨拶をしてくれていると思う。これについては何を自惚れているの?と誰かに指摘されればすぐさますみませんと誤るレベル。


席について私がすること。

それは、横のフックに荷物を掛ける。続いて左隣の窓から天気を確認。この二つは絶対に外せない、というか怠ったことがない。


このクラスになってから、窓際の席に何故かあたる。こんなことで自分の運を使い果たしていたら悲しいけど、すごくうれしい。

窓際の席が私にもたらす恩恵、それは窓越しの光でまどろんだり、転寝したり(特に現国・古典)。とにかく晴れた日は心地よい。

雨降りは雨降りで、それなりに窓の外をみては楽しんでいるけど。


今日は曇り。窓に教室の中が映る。

そして、そこには普段私には関係のない人達が近づいてくる姿が。

あ、私じゃないかも、なんて思っていたら声をかけられた。


「木内さん、要と付き合い始めたの?」

かわいい。語尾がなんともいえない。しかも、この手の質問は私のイメージの中では、刺々しく言われるはずなのに、そんな感じがぜんぜんない。

この可愛い声で可愛らしく質問するのは沢野井(さわのい)さん。あの有名なシリーズもの映画から言葉を借りるなら、我がクラスのマドンナ的存在。でも、どうしてそんな質問が?理由を尋ねてみると先週のことだった。


「だって、土曜日に駅まで一緒に帰ったでしょ?」

「うん。でも用事があったからなの。そもそも、私たちはただの友達だし。」

「そうなのぉ?」

「うん、そう。」

「他のクラスの子がね、要のこと好きみたいで…、それで聞いてみてって言われちゃってて…、いきなりこんな質問してごめんなさいね。」

「ううん、別に。」

「でも、木内さんの言うただの友達って定義はなに?」

可愛いわりには難しい質問をするのね、沢野井さんって。

「定義…」

「そ、定義。だって、女の子同士なら一緒に帰ったりするの普通だけど、男女では珍しいでしょ。」

「珍しいの?」

「うん。木内さんも今度学校帰りに周りを気にしてみたら。普通、男女で帰っている人たちは手繋いだり、二人の間の距離がぜんぜんなかったりして、いかにも付き合ってます、って感じだから。普通に友達で一緒に帰ってますって組み合わせはそうそういないと思うよ。」



学校から帰る道、電車の中、とにかく周りを見渡した。確かに、二人仲良く帰っている人達は、双方をそれぞれの言葉で表すと彼女と彼氏っぽい。彼女の言うとおり。


家の近所に近づくと幼稚園くらいの男の子と女の子がいた。お母さんたちの長話もなんのその、二人は仲良くじゃれあってる。

こんな小さいうちから…。やっぱり男女はどんなに小さくても二人きりでいたら睦みあうものなのかしら。

そうだ、定義の件は脇田君にも聞いてみよう。

そして決めた、今日は私から電話する。


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