気ままな10月、日曜日
気ままな10月、日曜日
DEAD END
「望(のぞみ)に朝言ったことって、」
「のぞみ?」
「ああ、沢野井望さん。」
そうだった、沢野井さんは沢野井望さんだ。ってことは朝のことって…
「あのさ、朝、望に言ってたことからすると、木内さんも俺のことを少しは好きになってくれてるっと理解してもいいのかな?だとしたら話はすごく簡単なんだけど。でも、その前に一つだけ確認させて。昨日は俺の保身の為に望にただの友達って言ったらしいけど、何からの保身?」
「それは…、そのぉ…、脇田君の周りにいる子たちはどっちかって言うと華やかだったり、沢野井さんみたいにかわいいじゃない。私はいつだって、居ても居なくても大差ない人だから…、なんて言ったらいいんだろ?う〜ん、不釣合い。脇田君のイメージが落ちちゃうよ。」
「木内さん、そんな馬鹿なことを考えてるんだ。」
「馬鹿なことなんかじゃちっともないよ、私には。」
「ゴメン。でも、俺には木内さんがいるかいないかは雲泥の差なんだけど。この間言った好きだっていう気持ちは本当だし、気持ちを伝えるだけで、満足なんてしていない。出来ればいつも傍にいて欲しいんだ。」
「私なんかすごくつまらない人間よ。きっといつか、ううん、すぐにイヤになるわ、脇田君。だったら…、」
やだ、私ったら、何を感情的になっちゃってるの。
「泣かないで、木内さん。木内さんを泣かせたくて話をしているわけじゃないから。ただ、付き合ってみよう。」
涙が出きって落ち着くまで、脇田君はあれから何の言葉も発せず隣にいた。
脇田君っていう物体そのものが傍にいてくれるのはその息使いとかで分かるんだけど、それだけじゃなくて、脇田君そのものをすごく近くに感じた。
「すき」
「えっ、」
「すき」
「それって、付き合うことはOKって返事?」
「分からない。でも、すき。」
「難しいなぁ。」
「ゴメンナサイ。」
「いいよ、それだけ分かれば。ちょっと立って。」
「立つの?」
「そう。ソファって隣に座るにはいいけど、向き合うにはいまいちだから。」
立ち上がると脇田君に抱き締められた。びっくりしたけど、心地いい。
「すき」
馬鹿の一つ覚えだけど思わず口をついて出た言葉。
「分かってる。だから木内葵は俺のもの。」
耳元で囁く声は、私を自分の所有にしようとしている。
私は…、あなたをもっと知って、あなたに恋をして、そしていつも感じていたい。
そう、大好き。
ただ体を寄せ合っているだけなのに、好きって気持ちが溢れてくる。
「木内さん、これからは葵って呼んでもいい?」
「はずかしい。」
「それって、恥ずかしいけどOKってことだよね。」
「…うん。」
大好きになった脇田君には名前で呼んで欲しいから、思わず肯定してしまった。
脇田君の体温は、私にとっては必要不可欠となろうとしている。
〈end〉
*実は次は『いろづく11月、月曜日』(R-18)を予定しています。
ただ、このタイトルだと今回のようにその月中に終わらせなくては
と思ってしていそうで…。ようは怠惰なんです。どうしよう…
そうそう、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。