気ままな10月、日曜日

 


ロビーの光



眩しい。目は暗闇にいたから、ロビーのこの黄色っぽい白熱灯ですら眩しく感じる。いつもは、この空間から蛍光灯が輝くトイレにいって、顔がおかしくないかチェックをして帰る。じゃあ、今日は?やっぱりいつもと同じよね。


「あ、ちょっとゴメン。私トイレにいくから。じゃ 」

あね、サヨナラの、『あ』あたりから脇田君に遮られた。

 

「分かった、じゃあここで待ってるよ。」

え〜〜〜〜、どうして待っててくれるのよ。訳分かんない。


言った手前、脇田君のハンカチを握り締めて私はトイレへ。


トイレの個室は私に時間をくれる。便座にすわりながら考える。

脇田君はどうして私を待つのか?記憶をたどる。そう言えば、ハンカチのことは気にしなくていいって言ってた。とすると、トイレからでてきた私からハンカチを返してもらって帰るつもりなんだ。

そういうことか、納得。でも、それじゃあ悪いから、そこは断ってちゃんと洗って返さないとね。


今までの流れを全て理解した私は、脇田君へ向かって歩き出す。

私を待つ脇田君の顔が心持微笑んでいるのは気のせいかな?ま、そんなのどうでもいいや。


「ありがとう、待っててくれて。それと、ハンカチはちゃんと洗って学校で返すから。」

「気にしなくていいのに。それより、昼飯食いにいこ。」

「え、」

11時半過ぎたから、昼飯で丁度いいだろ。」

「え、」

駄目よ、木内葵、なんだか脇田君のペースにやられているじゃない、さっきから。


「あのね、脇田君、今日は偶然とはいえ一緒に映画が見れてよかった。でも、」

「偶然じゃないよ。俺知ってたから。今日、木内さんがここ来るの。教室で誰かと話してたでしょ、日曜にここで映画見るって。」

頭がついて行かない。むしろ、後退しそう。


「あのさ、俺、木内さんのことずっと好きだったんだ。」

え〜〜〜〜、どうして。だって、脇田君と私じゃあまりにも接点がないじゃない。




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