気ままな10月、日曜日

 

レンタル中



今日もレンタル中のしるし。いつになったら帰ってくるんだ、このディスクは。


今日は木曜。日曜日にあんなことがあったけど、私の学校での、毎日は別段変化もなく進んでいく。ま、画期的に変化したら、それはそれで困るけど。

ただ、脇田君を私が目で追い始めた。


脇田君は、やっぱりクラスの中心的人物。どのクラスにもいる、結構気が強くて、他のクラスにも顔がきく、可愛い子が何人かいる女の子のグループが周りにいつもいる。しかも、『かなめ』とその子たちに呼ばれている。

見てれば分かるけど、脇田君の男友達も女の子慣れしている、人気があるタイプ。

罷り間違って、あの中に私がいたら?それは絶対ない、浮くなんてもんじゃないよ。


やっぱり変。私がお願いして脇田君に友達になってもらうという話はあり得ても、その逆はちょっと…。



でも、21時のこの電話は脇田君から。

月曜から今日まで、これで毎日。それも21時きっかり。

『今日、教室で目があったのに逸らされた。』

「そおかな?気のせいだよ。」

いや、ほんと。その通り。私が意図的に逸らしたの。だって、目で追ってたのがばれたくないじゃない。

『そうかなぁ。で、今日はどうだった。』

「まだ、レンタル中だった。大きな映画館でやってたやつじゃないから、レンタル屋さんでも一本しかないんだよ。映画館でも見れなかったから、絶対に見たいんだけど。本当に残念。」

脇田君が言ってたとおり、どうでもいい会話をこうして毎日繰り返す。


月曜はいきなりの電話で驚いた。火曜は連続の電話で驚いた。

水曜はおかしなもんで、21時にまたかかってくる気がなんとなくしていた。

そして、今日は、話すネタを考えながら生活した。

たった4日で、脇田君と話すのが一日の日課に組み込まれた気がする。


学校では話さないのに、こうして電話で話しているのも変だけど。


『あ、ねえ、ところでその映画のタイトルって何?』

「え、言ってなかったけ?」

『うん、なんかレストランが舞台でとかなんとか言ってはいたけど』

「はずかしいな、なんか、ずっと見たいと思っている映画のタイトルを誰かに知られるのって、」

『いいじゃん。』

「う〜〜〜ん、ディ 」

『待って、書き留めるから。ネットで調べてみる、どういう話か。』


自分の借りたいDVDが人様に借りられっぱなしなんてことすら、脇田君との会話の題材になるなんて。

こうやって、毎日の小さな出来事を誰かに話すのもそんなに悪いことじゃないみたい。


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