気ままな10月、日曜日

 

シーン



この映画には色々な人物が描かれている。そして、その中の人の恋愛模様も描かれている。


恋愛。

随分話が進んでから、キスシーンがお目見えした。一人で観ている分には問題ないけど、隣に人が、それも男の人がいるとちょっと恥ずかしい。

でも、恋愛をしているのは大人なわけで、キスシーンはすぐさまラブシーンって言えばいいのかな?その、深いつながりのシーンに変わった。


はっきり言って、そんな戸口の直傍の外でそんなことをしないで欲しい。映画的にみればいいシーンなんだけど、今、何も、ここに私達がいるのに…。


私の知っているえっちは、あ、知っているっていうかイメージするえっちはベットの中でするやつ。でも、いま目の前の画面に映し出されているのは、二人とも立っていて洋服も着ているけど、その息の荒さやその動きでえっちと十分わかるもの。そして、それがゆえに激しい愛に見える。


このシーンだって私一人で観ていれば、こんな状況下でも燃え上がる二人の愛って感じで、感動ものよ。でも、やっぱり脇田君がいるから凄く恥ずかしい。

そもそも、私が観たかった映画にこんなシーンが含まれていること自体…。


えっちのシーンはすぐに終わってくれた。ま、そういう映画(つまり男の子が好んでみるアダルトなやつ)ではないので、当たり前か。


終盤はまさかの展開があって、最後は世代交代で親子の絆が伺えて、本当にいい映画だった。

リビングの時計を見ると、時間は16時近く。

食い逃げ、鑑賞逃げっぽいけど、他にすることもないから、ここでサヨウナラの挨拶をするのが妥当よね。


座り心地の頗るいいソファに、私のお尻がサヨナラを告げる。

そして私は?

そして、私は脇田君にお礼を言わなきゃ。

「今日はありがとう。観れて良かった。それにお母様にもお礼を伝えてもらえる?とっても美味しかったって。」

「お茶でも飲んでかない?」

「う〜ん、そうしたいところだけどあんまり長居すると迷惑になっちゃうから。」

「そんなことはないけど。むしろ、木内さんなら大歓迎。」

「でも、カップとか汚して洗い物増やしちゃうから今日はこれで失礼するね。」

おばちゃんくさい言い訳だけど、これで失礼できそう。

そそくさと、自らすすんで玄関へ向かうとドアが勝手に開いた。

このドア人の心を反映するの?なんて思っていたら、一組のご夫妻が入ってきた。


「あら、お友達もう帰るの?」

「あ、」

そうよね、ここに入ってくるご夫妻ってことは

「あ、のう、私、脇田君と同じクラスの木内と申します。今日は突然おじゃまいたしましてすみませんでした。」

「ま、女の子のお友達だったのね。宜しくね、要の母と、こっちのおじさんが父です。」


脇田君のお父さんとお母さんは、とっても上品そうな優しい顔立ちの人たちだった。


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