色づく11月、月曜日

 

触覚


今回の話にはベットシーンがあった。こういうドラマのベットシーンは結合部分とかは見えないし、胸も映らないが、男の腰をふるシーンとかはカメラワークの力もあって、なかなかだ。


葵との距離は近い。

雨のお陰で、小さな音は拾い辛い。

ドラマのベットシーンのお陰で気持ちは高ぶっている。


すごいチャンスだと思う。でも、無理やりとか、その場のノリに任せてというのはイヤだ。


するときは彼女からの求めもあってがいいと思っている。


今日一歩進むのは、僕を今以上に感じて貰うため。

欲して貰うため。


ドラマが終わり、僕は不意に葵の手を握った。


「さっきのドラマの主人公みたいに、どこかを触っただけで何かが分かればいいのに。」

「駄目だよ。そんなの、触られるほうが恥ずかしいから。」

「でも、最近、葵がなんか考えてることが多かったから、ちょっと心配でさ。でも、恥ずかしいって、なんで?」


葵の顔に赤みがさす。考えている内容はなんとなく知ってるけど、図星のようだ。


「キライ。」

おいおい、それはないだろう。


「なんで?」

「分かんない。」

「じゃあ、二人で考えよう。分かるように。何を考えていたか話して。」

出来るだけ優しく、囁くように問いかけると目の前の澄んだ瞳がじっと僕を見つめ返した。


「私、初めてなの。」

「何が?」

「誰かとこうして付き合うのが。だから、どうしたらいいのかも、どうすべきなのかも分からない。」

「何を?」

「その…、男の人が、……脇田君が何を私に求めてどうしたいのか、」

「簡単だよ。俺は葵を心の底から好きで、葵にももっと好きになってもらいたい。」

「好きに?、……好きだよ。」

「じゃあ、大丈夫。抱き締めていい?」

「うん。」

隣同士に座っているから、正直抱き締めるのはちょっときつい。だから、思い切ってそのまま葵をベットに引き上げて組み敷くように抱き締めた。


僕の下にある葵の目は大きく見開かれている。


「前とちょっと違うけど、久しぶりだね、こうするの。」

「うん。脇田君にこうされるの落ち着く。でも…、」

「でも?」

「変なの、落ち着くのにドキドキする。どうして?」

「怖いからじゃない。葵だって好きあってる男と女が最終的に何をするか知ってるだろ?」

そこまで言うと僕の下の細い体は震えた。


「知ってるなら、言ってみて。知らないなら、教えてあげる。」

自分で言うほうがマシか、僕に言われるほうがマシか葵は必死に考えているようだ。


…セックス。」

消え入りそうな声で呟かれた言葉。でも、僕の期待通りの言葉。


「きっと、この体勢がそれを連想させるんだよ。だから、怖くてドキドキして、体が震えてるんじゃないかな。でも、大丈夫。」

「大丈夫?」

「そ、俺は葵が嫌がることはしたくない。だから、セックスも葵が俺を受け入れたいと思ったら、しよ?」

「私が受け入れる…」

受け入れるという言葉は精神的な意味で使ったんだけど、どうやら具体的な意味にもとれたようで、よりいっそう葵が赤くなった。



言った手前セックスはしないまでも、これはさせてもらおう。

「ね、でも、キスはしてもいい?」


彼女はじっと僕を見た後、小さく頷いた。


僕は彼女の唇を味わった。軽く何度も触れては、遠ざかる。けれども、その間隔は短くなっていく。

どうしようか、ここで止めるか、その閉ざされた中へ侵入しようか。


理性と本能は相反し、この状況では本能が勝つ。僕は知らないうちに彼女に入り込んでいた。幸いなことに彼女はなされるがままだ。


きっと初めてのキスなのに、いきなり舌を絡め取られるとは思ってなかっただろうな。

そして、僕の言った『キスしてもいい?』の真意も分かってないだろう。


葵の体から力が抜けるまで、時間はさほどかからなかった。

さてどうしようか…。


少しだけ大人になってもらわないと。


今日の彼女の服装は僕にとっては好都合だった。キスを繰り返しながら右手を左ウエストから、全ての布の下にもぐり込ませた。

そのままわき腹をなぞると、我に返った彼女が驚きの視線を返すのが分かる。


…あ、あの、」

「何?」

「手…、」

「うん、すごく滑らかな肌だね。ここにもキスさせて。」


葵の肌の感触は堪らなく気持ちよかった。今日はしないと言ってしまったことを後悔したくなるくらい。僕は体の位置を下へずらしながら、わき腹を撫で続けた。


少ししてから、腕を使いそっと服を上へ押しやる。僕の気持ちをよく知る手は、ブラジャーの線の上までその勢いに任せてあがっていってしまう。

お陰で視界には、服が上の方に寄せられ、左のブラジャーのカップの下らへんのみが見えるといういやらしい構図が広がった。


キスする場所はもう決まっている。


躊躇うことなく、左胸のブラジャーのカップに沿って何度もキスをする。その間、右手は休むことなく左の乳房ぎりぎりを愛撫する。


感じてくれているだろうか?


雨音がうるさ過ぎる。息があがっているのは分かるけど、そこに甘い吐息が混じっているのかどうか?


判断が出来ない。

けれど判断が出来ないのは、自分自身の興奮のせいかもしれない。


興奮は更なる興奮を求める。

どうしたらそれを得られるのか?

答えは簡単。僕の体は本能のままに、その柔らかさを求めて少し上へ。

カップから出ている部分に唇を這わす。


キスをする。強く。音がするほど。

きっと別の言い方のほうが合ってる。これは、愛撫。

愛しいから、だから…。


僕の手は、葵の肩へ伸びて、ストラップを優しくずらした。不完全に胸がその姿を現す。


その頂をなぞりながら今度は言い切る。

「ここにもキスをするね。」


短い悲鳴をあげる葵には、既に何かを言う力は残っていない。

卑怯かもしれない、だけどその分気持ちよくしてあげる。僕は葵が気持ちよくなればなるほど、本当は辛いけど。


どれくらいそうしていたのか、葵の声が少し掠れている。

そして僕も限界だった。

情けないけどトイレにでも行ってどうにかしないと。


「これ以上キスすると、有言不実行になるから。」

そう言って葵を解放する。

息を荒くしながらおき上がる葵の頬は今までのどの頬よりも赤い。


追い討ちをかけるように、可愛いのに反応がいい胸だったと囁くと目に溜まっていた涙が落ちた。


目が潤んでいたのは快楽からなのか、羞恥からなのか…。

僕の希望的観測があたっているといけないから敢て聞かないけれど。


その日、僕達は確かに大きな前進をした。


back   next    index