作法教室
作法教室
作法教室への招待状
夏休みも近づき、教室でも色々な国名が耳に入るようになってきた。
今年は北欧がトレンドのようで(これはうちのクラスでのトレンド)、フィンランドとかスウェーデンとか、お嬢様たちは話している。
教室にいるだけで、北欧のどっかにはノールカップという地名があって白夜を体験するにはいい場所だとかなんだとかが覚えられる。
覚えたところで、行く予定は全くないけど。
しかし、高校三年だというのにのん気だよな、みんな。そういうわたしも。
どうしてかというと、既に付属の大学に入るための評価がでているから。
外部を受ける子なんて、よっぽどのことがない限りいないし。学部さえ選ばなければ、だいたいの内申点で大学へは進めるからね。
ちなみにわたしは学部が選べる立場。というより、この学校の授業料は高いから奨学金をもらう為かなりいい成績をキープしてきた。
もし、成績が悪かったらここの授業料はどうしてたんだか、うちの親。
そう考えると、使うべきお金を使わなかったんだからわたしも海外旅行をしたいよ。
そんなことをうだうだ考えていた7月初め、親から夏休みの予定を伝えられた。
「礼儀作法?」
「そ、お作法。」
「どうして?」
「だって知っていて損はないでしょ。あんただって学校で他の子のお作法を見て、うっとりしたことあるでしょ。それを空気な綺麗な軽井沢の洋館で4週間も勉強できるのよ。しかも、作法の為の夜のフルコースディナー付き。最高じゃない。」
「軽井沢で4週間、しかもフルコースディナー付きって…、そんなお金があるなら海外行きたいよ。」
「そんなお金はないわ。残念ながらうちには。」
「じゃあ作法教室の代金は?」
「だってご招待だから無料なの。」
「はぁ?」
「おばあちゃんの古いお友達のつてみたいよ、出所は。だから、本当にちゃんとした作法教室じゃない?年の近い他のお嬢さんたちも何人か来るみたいだから行ってきなさい。」
「でもぉ、」
「うちのエアコン、調子が悪いからね。」
この一言が決めてだった。確かに去年の夏は、暑くて暑くて気が遠くなる毎日だったから。
『旅のしおり』は7月の半ばに到着した。その洋館までの交通機関やら、集合時間が明記されていて、みているうちにワクワクしてきた。
4週間は長い。だから、やっぱり荷物は多くなる。そして、不思議なことにただでさえ多い荷物におばあちゃんが着物を加えた。
ちなみにわたしは着れません。